【よしか暮らし】「ここにしよう」と体が教えてくれた。2年かけた家づくりと、自然と共にある循環の暮らし。
2026/3/31(火)目次
いなか暮らしに興味のある方の中には、古民家のリノベーションやDIY、そして地域の資源を活かした新しい働き方を思い描くかもしれません。今回ご紹介するのは、吉賀町の豊かな自然をステージに、自分たちのライフスタイルをゼロからデザインしている移住10年目のご夫婦です。
改修費用を半分に抑えたリノベの裏側や、未活用の森林から経済を生み出す炭焼きへの情熱。地元の加工所での味噌づくり。遠くの山々の景色が美しい少し高台のお宅で、地域の皆さんと繋がりながら暮らしている持田さんご夫妻にお話を伺いました。
Q:こだわりが詰まった素敵なおうちで、とても落ち着きますね。どのように改修されたのでしょうか。
杏奈: 内装は、梁(はり)や柱を残してリノベーションしたんです。たくさんの人に手伝ってもらったり、建具を譲ってもらったり…。壁は近くから赤土をもらってきて、その上に漆喰を塗りました。 業者さんにこだわりを伝えながら、港くんも自ら作業をして・・・そんな感じなので改修には2年かかりました(笑)。費用は全部お任せする場合の半分くらいに抑えられたかも。
何より、自分たちで手を動かしたおかげで、家のことがわかってできることが増えて、簡単な水回りの修理は私も覚えました。毎年のように雨漏りやちょこちょこ修理はあるけど、自分たちでやってみて、分からなければ近所の方に聞く。そうやって手入れをしながら住んでます。
Q:港さんが炭窯を作っている様子をSNSで拝見しました。どうして「炭焼き」を?
港: 炭焼きを体験する機会があって、クヌギの黒炭の美しさに感動したのがきっかけです。 炭焼きは、土・水・火・風という自然の要素と、広葉樹が伐採後に自ら再生する力を利用します。
「自然に寄り添う」ところが一番の魅力です。里山の雑木林は、吉賀町の未活用の資源です。それを活かして炭と薪にすることで、新たな経済循環を生む。そして山に人の手が入ることで、農作物の獣害を減らすことにもつながる。過疎化が進むこの地域を元気にしたい、という思いで取り組んでいます。
炭窯は一から本を読んだり、動画を参考にしたり、経験者にお話を聞いて、実際に一緒に作業をさせていただきながら地道に作りました。
Q:なぜ、移住先に吉賀町を選んだのですか?
杏奈: 大学院で有機農業を専攻していたとき、先生が「有機農業を学ぶなら柿木村がいいよ」って教えてくれたんです。卒業後は農業関係の仕事に就いたんですけど、どうしても数字や効率優先の商業ベースな働き方に馴染めなくて……。 悩んでいた時期にふと柿木村を訪れたら、なんだか体がすっと楽になったんです。「あ、ここにしよう」って直感的に決めちゃいました。 日本には「アメツチ」の文化があって、人間はいつか土に還る。そんな考え方が好きだから、小さな循環の中で土と共に暮らしたいという私の気持ちに、ここはぴったりでした。
港: 僕はまず、ホームページから役場の企画課に連絡をして、町内を案内してもらいました。そのときに「自然が豊かないいところだな」と感じたのが最初です。 その後「おためし住宅」に住みながら、ふるさと島根定住財団の産業体験制度を利用して実際に生活をしてみました。そこで実感した人の温かさと、豊かな自然。それが定住を決めた理由です。
Q:生業(なりわい)について教えてください。
港: この地域の豊富な森林資源を活かす仕事をしたいと考えて、伐採技術を習得するために10年近く林業に従事し、独立して今に至ります。家の近くで田んぼを2反と畑を少し、それからニワトリも飼っています。
杏奈: 私も最初は産業体験からスタート。地域のひとにたくさんお世話になりました。今は柿木村の加工所でお味噌を作っています。
Q:今の暮らしの中でどんなところが「好き」ですか?
港: 山や自然が、すぐ身近に感じられるところが好きです。

——そういえば、生まれたばかりの赤ちゃんを抱っこして散歩する杏奈さんの姿を、地域のみなさんは毎日温かく見守っていましたよね。私もその一人です。ほんとに毎日車から手を振ってました。
杏奈: よく歩いてたよね!(笑) そうやって周りの人と声を掛け合って、お互いに気に掛け合いながら暮らしている感じ。この距離感が、私は大好きです。
おわりに
取材の間、杏奈さんの弾けるような笑い声の横で、寡黙な港さんが深く頷く。そんなお二人の雰囲気に幸せな気持ちになりました。お子さんたちも元気に走り回っています。移住から10年。お二人の物語は、これからも吉賀町の豊かな山々と共に、ゆっくりと、けれど力強く続くのでしょう。
吉賀町は、2025年に合併20周年を迎えました。5つの地域それぞれに公民館を中心とした活動があり、地域のつながりが今も大切に守られています。お互いを思い合う温かな輪の中に、私たち移住者も優しく迎え入れられ、安心して暮らすことができる。お二人のお話を伺いながら、この町の「根っこ」にある豊かさを改めて感じたひとときでした。(文:野見山朋子/高津川てらす)
持田さん夫妻、私も、多くの移住者が移住の際にお世話になったのが「ふるさと島根定住財団」さんです。
しまね移住情報ポータルサイト「くらしまねっと」の島根のひとの中で移住者のインタビュー記事が掲載されていて、
その中にも持田さん夫妻のインタビュー記事がUPされています。
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