【よしか暮らし】「私、この家に住む!」Z世代の孫が選んだ、『吉賀町』

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    吉賀町の美しい川辺で遊び、広大な古民家を駆け回った幼少期。「いつかここに住みたい!」という少女の願いは、コロナ禍という時代の転換点を経て、確信へと変わりました。

    今回お話を伺ったのは、大学卒業と同時に祖父母の待つ吉賀町へ「孫ターン」した、移住3年目のななさん。デジタルネイティブなZ世代でありながら、誰よりも地域の豊かさを深く見つめる彼女の、等身大の暮らしに迫ります。

    yukigesiki

    「港区女子」より「吉賀女子」 ~ 祖父母との暮らしを選ぶ ~

    ――ゴールデンウィークと正月の帰省先だった吉賀町。中学生の頃にはすでに「ここに住みたい」と公言していたそうですね。

     はい。親戚の子どもが10人ほど集まっても余裕があるくらい大きな祖父母の家で、かくれんぼや鬼ごっこをして駆け回るのが最高の思い出でした。家のそばの水路でカニを探したり、川に飛び込んだり……。

    ただ、子ども心にふと気づいたんです。私の親世代はみんな町を出てしまっていて、戻ってくる気配がまったくない。「このままだと、大好きなこの家は空き家になってしまうかもしれない」という未来が、はっきりと想像できてしまったんですね。

    それなら、孫の私がこの家を継げばいいんじゃない?って。中学生の頃にはもう、楽しい記憶が詰まったこの場所で暮らすことが、憧れを通り越して「自分の現実的な未来」となっていました。

    ――新卒で移住という大きな決断。都会での就職に迷いはありませんでしたか?

     実は、東京の企業から内定を頂いて、港区での内定式にも出席したんです。

    でも、いざ自分が毎日満員電車に揺られ、成果主義の競争の中で生きていく姿を想像したら……どうしても違和感があって。 自分は争いごとが苦手だと感じていて、ずっと住みたかった「祖父母の家」という選択肢が現実味を帯びました。吉賀町は災害が少ないということも決め手です。町の採用試験を受け、卒業と同時にこちらへ来ました。

    「仕事を奪わない」ことが、祖父母への敬意

    ――おじいちゃん、おばあちゃんとの「3人暮らし」。孫として意識していることはありますか?

    「二人の仕事を奪わない」ことでしょうか。手伝いすぎると、かえって二人の気力や体力を削いでしまう気がして。私はただ、隣でたくさんお喋りをする。それが一番の刺激になっているみたいです。 料理は祖母の担当なので、私は自分の時間に「常備菜」を作り置きして、忙しい時に使ってもらえるようにしています。いつでも主役は祖父母です。

    ――現在はどのようなお仕事をされているのでしょうか。

     自治体と連携して、高校の公設塾の運営や、子どもたちの居場所づくり、町の交流スペースの企画などに携わっています。 決まったルーティンワークではなく、自分のアイデアを形にする場面が多いので、やりがいがあります。

    DSC_0559放課後の学習塾にて。翌日開催される、吉賀高校のアントレプレナーシップ発表会のプレゼン練習にアドバイスをするななさん。(写真左)

    最高の「遊び場」は、家の中にあった。

    ――お休みの日は、やはりアクティブに活動を?

    いえ、実は私、かなりの「引きこもり体質」で(笑)。休日は一歩も外に出ず、家でYouTubeやケーブルテレビを観て過ごしています。 今はカレンダー通りの休みではありませんし、田畑の手伝いや祖父母の通院付き添いで、自分の時間は限られています。でも、私にとってこの家は今でも最高の「遊び場」。どこかへ出かけなくても、家の中で十分に満たされているんです。

     

    「資本主義社会だからこそ、この空気に価値がある」

    ――移住を考える際、仕事や収入を不安に思う人も多いですが、ななさんはどう捉えていますか。

    私は「ワーク・ライフ・バランス」の「ライフ」を何より大切にしています。 今の世の中、お金で買えるものはたくさんあります。でも、どんな大富豪でも、吉賀町のこの清浄な空気や、何億光年も先から届く満天の星空を、自分の所有物にすることはできません。

    都会の夜景は人工的で終わりがありますが、自然がくれる光は全人類に平等です。新月の暗闇や、満月の明るさを肌で感じる。SNS映えのために切り取る生活ではなく、その価値を自分自身で深く味わう。資本主義社会だからこそ、この場所に住むこと自体が、とても贅沢なことだと思いませんか。

    25169534_m写真には写らない静寂。新月には漆黒の世界、満月には驚くほど明るいことを感じられる吉賀の夜。

    腹をくくって、地域の懐へ飛び込む

    ――地方ならではの「近所づきあい」に戸惑いはありませんか?

     私は「あそこの家の孫娘」として温かく迎えてもらえたので、恵まれていましたね。 消防団にも入っています。地域の運動会では貴重な20代として、ほぼ全種目に出場しました(笑)。町の方々と関わるのは楽しいですよ。自分の領域に踏み込まれるのが苦手な方には少し大変かもしれませんが、私はこの距離感を楽しんでいます。
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    地域の運動会も全力で参加します。心から楽しんでいるななさん。

    ――最後にななさん、今後の目標を教えてください!

     家の2階部分を自由に使っていいと言われているので、DIYしていくことが目標です。自分好みの空間を少しずつ作っていきたいですね。

     

    おわりに

    「Z世代」という言葉から想像していた答えを、軽やかに、そして知的に裏切ってくれたななさん。 彼女が語る「空気の価値」や「家という遊び場」の話は、私たちが忘れかけていた地方移住の核心を突いている気がします。 吉賀町の未来を見つめる若き移住者のこれからが、ますます楽しみになりました。(文:野見山 朋子/高津川てらす)

     

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